国内で売られているディーゼル車のうち、アドブルー(AdBlue、尿素水)が要らないことをメーカーの公式資料で確かめられたのは、マツダのSKYACTIV-D搭載車だ。CX-60、CX-80、先代CX-5、CX-3(在庫車のみ)がこれに当たる。マツダは、NOx(窒素酸化物)の後処理装置を使わずに排出ガス規制に適合させたと、技術資料で説明している。
反対に、トヨタのランドクルーザー(300)・ハイラックス、三菱のデリカD:5・トライトンは、取扱説明書に尿素SCRシステムやAdBlueの補充の項目があり、補充が必要だ。残量がなくなると、エンジンを再始動できなくなる。マツダでも、商用車のボンゴブローニイバンとタイタンLHRは尿素SCRを使う。
載せたのは、2026年9月27日時点でメーカーの公式資料で確かめられた車種だけだ。
アドブルー不要と公式資料で確かめられたのはマツダのSKYACTIV-D乗用車だけ
| メーカー | 車種 | ディーゼルエンジン | アドブルー(尿素SCR) |
|---|---|---|---|
| マツダ | CX-60 | SKYACTIV-D 3.3/e-SKYACTIV D 3.3 | 不要(NOx後処理装置なし) |
| マツダ | CX-80 | SKYACTIV-D 3.3/e-SKYACTIV D 3.3 | 不要(NOx後処理装置なし) |
| マツダ | CX-5(先代・KF型) | SKYACTIV-D 2.2 | 不要(NOx後処理を必要としない) |
| マツダ | CX-3(在庫車のみ) | SKYACTIV-D 1.8 | 不要(後処理なしで規制に対応) |
| トヨタ | ランドクルーザー(300) | 3.3L ディーゼル | 必要 |
| トヨタ | ランドクルーザー”70″ | 1GD-FTV(2.8L ディーゼル) | 必要(尿素インレットを標準装備) |
| トヨタ | ハイラックス | 1GD-FTV(2.8L ディーゼル) | 必要 |
| 三菱 | デリカD:5 | 4N14 | 必要 |
| 三菱 | トライトン | 4N16 | 必要 |
| マツダ | ボンゴブローニイバン | 1GD-FTV(2.8L ディーゼル) | 必要 |
| マツダ | タイタンLHR | ディーゼル | 必要(近接DPD+尿素SCR) |
マツダの4車種は、諸元表でSKYACTIV-Dの設定を、マツダ技報でNOx後処理装置が無いことを確かめた。新型CX-5、MAZDA3、CX-30、MAZDA2は、公式サイトでディーゼルの設定を確かめられず、表に入れていない。CX-3は、マツダが「2026年2月末をもちまして、国内向け車両の生産を終了」と告知しており、今は在庫車だけの販売だ。
マツダの商用車は別だ。ボンゴブローニイバンのカタログ(2026年8月現在)は「DPR」と「尿素SCR」の組み合わせ、タイタンLHRのカタログ(2026年7月現在)は「近接DPD+尿素SCR」と記載している。
ハイラックスとトライトンはピックアップトラックで、参考として載せた。ランドクルーザー”250″は現行の主要諸元表がガソリン車だけのため外した(後述)。

アドブルーとは、尿素SCRシステムで使う尿素水のこと
アドブルーは、排出ガスのNOxを減らすために使う尿素水だ。三菱自動車はデリカD:5の公式ページで、仕組みを次のように説明している。
尿素SCRシステムは、尿素水溶液である「AdBlue®」を使ってディーゼルエンジンが排出する窒素酸化物(NOx)を浄化するシステムです。有害物質である窒素酸化物(NOx)をAdBlue®から生成されたアンモニア(NH3)と化学反応させることで、窒素酸化物(NOx)を大気に無害な窒素と水に分解し排出。
SCRはSelective Catalytic Reduction(選択還元触媒)の略だ。トヨタの取扱説明書は、AdBlue®は「ISO 22241-1 に準拠したもの」を使うよう書いている。
尿素水は走るほど減り、三菱の取扱説明書は「走行距離に応じて補給が必要です」と書いている。
マツダはNOxの後処理装置を使わずに排出ガス規制に適合させている
マツダは技術資料で、SKYACTIV-DがNOxの後処理装置を使っていないと説明している。
- SKYACTIV-D 3.3(CX-60・CX-80):マツダ技報No.39(2022)は「NOx 後処理装置なしで国内 RDE(Real Drive Emission) 規制に余裕をもって対応するクリーン排気」と書いている
- SKYACTIV-D 2.2(先代CX-5):マツダ技報(2017)は、従来型を「NOx後処理を必要としないクリーン性能」と紹介し、その価値を引き継いで改良したと書いている
- SKYACTIV-D 1.8(CX-3):マツダ技報No.36(2019)は「1.5Lと同様に後処理なしで規制に対応した」と書いている
先代CX-5(KF型)の取扱説明書の「燃料、オイル、液類」にも、AdBlueの項目はない。
なお、ここで引いたマツダ技報は、それぞれのエンジンを開発した時点の資料だ。個々の車の仕様は、記事の後半「取扱説明書で確かめる」の見出しで書く方法で確かめてほしい。
アドブルー不要でも、排出ガス規制が緩いわけではない
三菱デリカD:5の環境仕様は適合規制を「平成30年規制」、NOxの規制値を「0.15」g/kmと書く。マツダCX-60の諸元表もディーゼル車(3DA-KH3P)を「平成30年排出ガス規制適合」と記載している。尿素SCRを使うデリカD:5も使わないCX-60も、同じ平成30年規制に適合している。違うのはNOxを減らすやり方だ。
また、マツダの説明はあくまで「NOx」の後処理装置を使わないというもので、排ガスの浄化装置がまったく無いという意味ではない。
トヨタのディーゼルは尿素SCRを使い、切れるとエンジンを再始動できない
トヨタの取扱説明書には、ランドクルーザー(300)・ハイラックスとも「AdBlue®(尿素水)の補充」の項目があり、同じ書き出しで始まっている。
この車は排気ガス中の窒素酸化物を低減するためにAdBlue®を使用しています。
続けて「AdBlue®の残量がなくなると、エンジンを再始動できなくなります」と書いている。消費の目安は、取扱説明書では次のとおりだ。
| 車種(取扱説明書) | 通常走行で1Lを消費する距離 | 満タンからなくなるまで | タンク容量 |
|---|---|---|---|
| ランドクルーザー”250″(2025.09~2026.03) | 約500km | 約8300km | 17.4 L |
| ランドクルーザー(2026.09~) | 約1000km | 約17000km | 17.4 L |
| ハイラックス(2026.05~) | 約600km | 約10000km | 17.0 L |
トヨタは、上り坂や渋滞などで消費が増えるとしている。
ランドクルーザー”250″は、2024年4月〜2026年3月生産の版の取扱説明書にAdBlue®の補充の項目があるが、2026年4月〜の版にはない。2026年4月版の主要諸元表もガソリン車(2.7L)だけだ。この期間に作られたディーゼル車を中古などで選ぶなら、アドブルーが要る。
ランドクルーザー”70″は、トヨタの主要装備表に「尿素インレット(フロントフェンダー左)」が標準装備として載っている。

三菱のデリカD:5とトライトンも尿素SCRを搭載している
三菱自動車は、デリカD:5の公式ページで、4N14エンジンに「尿素SCRシステム」を三菱自動車として初めて採用したと書いている。デリカD:5の取扱説明書には、次の警告の説明がある。
- 走行可能距離が約2,400km以下になると、残量の警告が出る
- 走行可能距離の表示が0kmになると、エンジンの再始動ができなくなる
- 尿素SCRシステムの警告が出てから約600kmで、エンジンの再始動ができなくなる
トライトン(4N16エンジン)の取扱説明書にも「尿素SCRシステム(AdBlue®の関連システム)」の項目がある。
輸入車はメーカーごとに公式の説明の細かさが違う
- ランドローバー:公式ページで「尿素SCRシステム(選択触媒還元)の技術は、2016年モデルのすべてのランドローバー ディーゼル車に搭載」と書いている。なくなった状態でエンジンを止めると再始動できないとしている
- フォルクスワーゲン:2021年12月21日のリリースで、Golfに追加したTDIに「ツインドージング(デュアル AdBlue 噴射)システム」を採用したと発表している。現在どのTDIを売っているかは確かめられなかった
- BMW:BMWグループ(ドイツ本社)は2018年1月17日の発表で、「SCR catalytic converter with AdBlue injection」(AdBlue噴射式のSCR触媒)を全ディーゼル・モデル系列で標準にしたと説明している。日本向けでは、BMWジャパンも2020年4月2日に発売した新型118dについて、「高品質尿素水(AdBlue)を活用し排気ガスを無害な窒素と水に分解する、SCRシステム」を搭載したと発表した。点検整備パッケージ「BMW サービス・インクルーシブ」も、項目に「AdBlue®の補充」を挙げ、「AdBlue®の補充は法定1年定期点検ごと2回まで、あるいは警告灯が点灯した場合」としている(モデルにより適用されない項目がある、との注記付き)。今売っている車種ごとの記載は、公式の車種ページや、確かめられたX3の価格表・諸元には見つからなかった
BMWには、アドブルーを使わないディーゼルもあった。2012年に日本で発売した「BMW 523d BluePerformance」と「BMW X3 xDrive20d BluePerformance」について、BMWジャパンは「NOx(窒素酸化物)吸蔵還元触媒などメンテナンス・フリーの最先端排出ガス処理技術」を採用したと発表している。ただし同じ2012年春に日本で売り出したX5 xDrive35d BluePerformanceは、BMWジャパンの発表でSCR(選択触媒還元)システムを採用しており、2018年より前でも車種によって違う。「BMWのディーゼルはアドブルー不要」という話はこの世代の一部の車種(523d・X3 20dなど)の説明で、2018年以降のBMWの説明とは合わない。中古のBMWディーゼルは、その年式の取扱説明書(BMWはDriver’s Guideアプリで車台番号を入れて見る)で確かめる。
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メルセデス・ベンツ、アウディ、ボルボ、プジョー、シトロエン、ジープは、公式資料で確かめられなかったため扱っていない。
自分の車・買う車にアドブルーが要るかは取扱説明書で確かめる
確実なのは、その車の取扱説明書を開くことだ。トヨタ・三菱・マツダはウェブで公開している。
- 目次に「AdBlue®(尿素水)の補充」「尿素SCRシステム」があれば、アドブルーが要る車だ
- メンテナンスの「燃料、オイル、液類」などの項目に、AdBlueが並んでいるかを見る
- カタログに書いてある例もある。マツダのボンゴブローニイバンやタイタンLHRのカタログは「尿素SCR」と明記している
今回開いたマツダ・トヨタ・三菱・BMWの諸元表には、尿素SCRの有無を示す専用の欄が見当たらなかった。諸元表でエンジン型式を確かめ、取扱説明書に進むとよい。
中古車も同じだ。ランドローバーは「2016年モデルのすべてのランドローバー ディーゼル車に搭載」と書いており、年式で違うことがある。その年式の取扱説明書で確かめる。
要る車なら、補充をどこで受けられるか、費用がかかるかを販売店に確かめておく。

クルマの維持費と燃費については、維持費・燃費のカテゴリにほかの記事をまとめている。
情報源
- マツダ「MAZDA CX-60 諸元・装備」(諸元表PDF 2026年3月版)
- マツダ「MAZDA CX-80 諸元・装備」(諸元表PDF 2026年3月版)
- マツダ「MAZDA CX-5(KF)諸元・装備」(諸元表PDF 2025年10月版)
- マツダ「MAZDA CX-3 諸元・装備」(諸元表PDF 2025年12月版)
- マツダ「MAZDA CX-3 グレード」(国内向け生産終了の告知)
- マツダ「ボンゴブローニイバン」カタログ(PDF 2026年8月現在)
- マツダ「タイタンLHR」カタログ(PDF 2026年7月現在)
- マツダ技報No.39(2022)「MAZDA CX-60 SKYACTIV-D 3.3 の開発」(PDF)
- マツダ技報(2017)「クリーンディーゼルエンジン新型SKYACTIV-D 2.2の開発」(PDF)
- マツダ技報No.36(2019)「新開発SKYACTIV-D 1.8 の紹介」(PDF)
- マツダ CX-5(KF)電子取扱説明書「燃料、オイル、液類」
- トヨタ ランドクルーザー”250″ 2025.09~ 取扱説明書「AdBlue®(尿素水)の補充(ディーゼル車)」(生産年月2025年09月~2026年03月)
- トヨタ ランドクルーザー”250″ 取扱説明書一覧
- トヨタ ランドクルーザー”250″ 主要諸元表(PDF 2026年4月版)
- トヨタ ランドクルーザー 2026.09~ 取扱説明書「AdBlue®(尿素水)の補充」
- トヨタ ハイラックス 2026.05~ 取扱説明書「AdBlue®(尿素水)の補充」
- トヨタ ランドクルーザー”70″ 主要諸元・主要装備(PDF 2023年11月版)
- トヨタ ハイラックス 主要諸元(PDF 2026年6月版)
- トヨタ ランドクルーザー(300)車種ページ
- 三菱自動車「デリカD:5 環境性能」
- 三菱自動車「デリカD:5 環境仕様」
- 三菱自動車 デリカD:5 取扱説明書「尿素SCRシステム(AdBlue®の関連システム)」
- 三菱自動車 トライトン 取扱説明書「尿素SCRシステム(AdBlue®の関連システム)」
- 三菱自動車「トライトン 主要諸元」
- ランドローバー「ディーゼル エキゾースト フルード(DEF)」
- フォルクスワーゲン グループ ジャパン「新型『Golf』にディーゼルエンジン“TDI”を追加」2021年12月21日(PDF)
- フォルクスワーゲン「エンジンオイルおよびフルード類」
- BMW「BMW サービス・インクルーシブ」
- BMW Group PressClub Global「BMW model update measures for the spring of 2018」2018年1月17日
- BMWジャパン「最新の直列4気筒クリーン・ディーゼル・エンジンを搭載した新型BMW 118d発売」2020年4月2日
- BMWジャパン「ニューBMW 523d BluePerformance登場」2012年8月29日
- BMWジャパン「BMW X3にクリーン・ディーゼル・エンジン搭載のニューBMW X3 xDrive20d BluePerformance登場。」2012年9月24日
- BMWジャパン「ニューBMW X5 xDrive35d BluePerformance」発表 2011年11月21日
- BMW「Driver’s Guide アプリ」

