アウディに「壊れやすい年式」があるかどうかを、数字で断定できる公的な資料はない。輸入元のフォルクスワーゲン グループ ジャパン(アウディ事業部)も国土交通省も、年式別・車種別の故障率は公表していない。確かめられるのは、国に届け出られたリコールと改善対策の記録だ。
国土交通省のリコール情報検索で車名「アウディ」を調べると、届出は160件(リコール148件・改善対策12件)あった。届出日は1993年5月13日から2026年5月21日まで(2026年9月28日に確認)。このうち対象が1万台を超える届出は16件で、そのうち11件は輸入期間の始まりが2000〜2015年の車だった(編集部が国交省のデータを数えたもの。複数年にまたがる届出は輸入期間の始まりの年で分けた)。対象台数は輸入された台数に左右されるため、この内訳が年代ごとの故障の起きやすさを表すわけではない。
同じ部品の不具合が何度も届け出られた例もある。2008〜2015年ごろに輸入されたA1・A3・TTの7速Sトロニックだ。以下、輸入時期ごとに主な届出を確かめる。
リコールの件数は「壊れやすさ」の数字ではない
国土交通省の説明では、リコールは設計・製作過程に原因があって保安基準に適合しない(または適合しなくなるおそれがある)車について、自動車メーカーが自らの判断で国土交通大臣に事前に届け出たうえで、無料で回収・修理する制度だ。改善対策は、保安基準に規定はされていないが、不具合が発生した場合に安全の確保と環境の保全上看過できない状態のものについて行う届出だ。
届出の台数は「対象になりうる車の範囲」で、実際に壊れた台数ではない。アウディジャパンも、車台番号の範囲には対象にならない車両や、すでに対策が終わった車両が含まれる場合があるとしている。
もう一つ注意したいのが「年式」との違いだ。届出に書かれるのは車の輸入期間で、アウディジャパンは次のように断っている。
対象車の輸入期間はご購入の時期とは異なります。(アウディジャパン「リコール関連情報」)
登録した年(いわゆる年式)が同じでも、輸入された日によって対象になったりならなかったりする。この記事で「〜年輸入」と書く年は、すべて届出に書かれた輸入期間だ。
2008〜2015年輸入のA1・A3・TTは7速Sトロニックの届出が5件ある
同じ車種群の同じ装置で届出が重なった例が、A1・A3・TTに積まれた7速Sトロニック(デュアルクラッチ式の自動変速機)だ。国交省の記録に「7速Sトロニック」(1件は「7速DSG」)と書かれた届出が5件あり、5件とも区分はリコールになっている。
このほか2015年4月15日には、A3スポーツバック・A3セダン(2013年9月28日〜2014年7月18日輸入、1,829台)の自動変速機制御コンピュータのプログラムについて改善対策が出ている。国交省の記録に「7速」の記載はないため、下の表には入れていない。
| 届出日 | 不具合の部位と内容 | 輸入期間 | 台数 |
|---|---|---|---|
| 2013年5月8日 | 自動変速機制御コンピュータの基盤材質 | 2008年8月20日〜2011年11月16日 | 13,752台(A3・A1) |
| 2014年1月16日 | ギアオイルが不適切で制御コンピュータの基盤がショート | 2012年12月6日〜2013年7月18日 | 4,759台(TTクーペ・A3・A1) |
| 2019年9月19日 | メカトロニクスのアッパーハウジングのねじ切り加工 | 2008年8月20日〜2015年2月5日 | 35,211台(TTクーペ・A3・A1) |
| 2020年5月27日 | メカトロニクスのアッパーハウジングのねじ切り加工 | 2008年8月20日〜2014年8月15日 | 3,433台(TTクーペ・A3・A1) |
| 2020年8月26日 | メカトロニクスのアキュムレータ取付け部のハウジング加工精度 | 2011年3月28日〜2012年10月29日 | 11,015台(TTクーペ・A3・A1) |
2013年と2014年の2件は、制御コンピュータの内部ショートで電源用ヒューズが溶断するおそれがあるというものだ。走行中に起きると駆動力が伝わらず惰性走行になり、止まったあと再発進できなくなる。国交省の記録には、制動と操舵の機能は保持されると書かれている。
2019年以降の3件は、メカトロニクスのハウジングに亀裂が入るおそれがあるというものだ。油圧が下がり、最悪の場合は駆動力が伝わらず走行できなくなる。ただし2020年5月27日の届出(外-3035)は、2019年9月19日の届出(外-2917)について製造ロットの確認方法に不備があったため、再確認を目的に出し直したものだとアウディジャパンの資料に書かれている。5件がすべて別の不具合というわけではない。
措置は、アッパーハウジングの製造識別マークを確認して該当すれば対策品に交換する(外-3035)、自動変速機制御コンピュータのプログラムを書き換え、油圧低下の故障コードが入っていればメカトロニクスを交換する(2020年8月26日の外-3079)、というものだ。

2000〜2007年輸入のA3・A4・A6・A8・TTなどは点火コイルのリコールが2回ある
2008年11月19日の届出は、点火コイルの材質が不適切でコイルボディに亀裂が入り、失火して排出ガスの基準値を超えるおそれがあるというものだ。輸入期間は2000年10月16日〜2006年7月13日で、A3・S3・A4・A6・A8・TT・allroadクワトロなど53,814台が対象になった。
2009年3月11日には同じ内容で、2006年6月12日〜2007年6月12日輸入のA3スポーツバック・A4・A6・A8・Q7・TT・RS4・S6・S8など6,158台が届け出られた。措置はどちらも、点火コイルの部品番号を点検して対策品に交換することだ。
2004〜2013年輸入のA6・A4はエアバッグの届出が67,341台
アウディの届出で台数が最も多いのは、2016年10月26日のエアバッグのリコールだ。運転席用または助手席用のインフレータ(膨張装置)でガス発生剤の吸湿防止が不適切な場合、高い湿度の中で大きな温度変化を繰り返すとガス発生剤が劣化し、展開時にインフレータ容器が破損するおそれがある。
輸入期間は2004年7月12日〜2013年4月17日で、A6・A6アバント・A6オールロード・S6・RS6・A4・S4などが対象だ。対策品の準備に時間がかかるため、まず全使用者にダイレクトメールで知らせ、準備ができた段階で再度連絡して交換する、とされた。
A4系では2014年11月19日にも、エアバッグ制御コンピュータのプログラムが不適切で特定の衝突形態でエアバッグが展開しないおそれがあるとして、2012年2月3日〜2014年10月21日輸入の14,255台が届け出られている。
2010年前後〜2010年代輸入の車は燃料系と冷却系の届出が大きい
2006〜2018年ごろに輸入された車では、燃料系と冷却系で台数の多い届出が続いた。
- 2017年6月29日:A4・A5・A6の補助クーラントポンプ。異物でポンプが動かないときにモーターへ電源が供給され続け、最悪の場合は火災に至るおそれ。輸入期間2011年12月6日〜2017年2月10日、25,738台
- 2017年6月29日:Q5・SQ5・Q7の燃料ポンプフィルターフランジ。被水で劣化して亀裂が生じ、燃料が漏れるおそれ。輸入期間2006年9月28日〜2017年3月15日、13,968台
- 2022年6月29日:Q3・Q2・A3・A1の燃料パイプ取付けボルト。締め付けトルクの設計値が不適切で緩み、燃料漏れで最悪の場合は走行不能になるおそれ。輸入期間2015年6月20日〜2018年11月10日、20,012台
改善対策で最も台数が多いのは、2019年5月29日のエンジン始動/停止スイッチだ。文字の字体が不適切で表面のクロームコーティングが剥がれ、操作時に指先を負傷するおそれがあるとして、2007年7月10日〜2013年10月21日輸入のA3・A4・A6・Q3・Q5・Q7など54,606台が対象になった。
新しい年式でも届出はある
「新しい年式なら届出はない」とは言えない。2023年10月12日には、車室内のヒューズホルダーのコネクターが正しく取り付けられていないものがあり、最悪の場合は走行中にエンジンが停止するおそれがあるとして、2021年2月8日〜2023年7月26日輸入のA3・S3・RS3・Q2・SQ2の12,930台が届け出られた。
2026年9月16日には、TTS・TT・SQ2・S3・A3・RS3の燃料タンクのリコール(外-4239、858台)がアウディジャパンの2026年度の一覧に載った。国交省の検索データにはまだ反映されていなかった(2026年9月28日時点)。内容と対象の調べ方はアウディA3・S3・TT・SQ2などリコール858台の記事にまとめている。

自分のアウディが対象かは車台番号で調べる
アウディジャパンの「リコール等情報検索」に、車検証に書かれた17桁の車台番号(ハイフンは除く)を入れると確かめられる。この検索は未実施分だけを表示し、作業を済ませてから反映されるまで1か月程度かかる。正規に輸入・販売された車に限られる。
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中古で買う・売るときは、前の持ち主のときに改修が済んでいるかも含めて確かめておきたい。範囲に入っているか迷うときは、Audi正規販売店のサービス工場に車か車検証の内容を示して問い合わせるよう、アウディジャパンは案内している。リコール・改善対策の修理は無料で、国交省は安全確保の観点から必ず受けるよう呼びかけている。
なお、アウディのメーカー保証(Audi Warranty)は新車納車日から3年間で、有償の延長保証(Audi CarLife Plus.)で5年目まで延ばせる。リコールの改修は、この保証期間とは別に受けられる。
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ほかの車のトラブル対策は、トラブル・弱点対策のカテゴリにまとめている。

