日産キックスが「壊れやすい」かどうかを、数字で言い切れる公的な資料はない。国土交通省にも日産にも、車種ごとの故障率を公表したものは確認できなかった。確かめられるのは、日産が国土交通省に届け出たリコールの記録だ。
ここで扱うのは、2020年に発売された現行のe-POWERのキックス(型式P15系)だ。2008〜2012年に販売された旧型のキックス(型式H59A)は別の車で、この記事には含まない。キックスのリコールは、確認できた範囲で5件ある(2021年10月〜2025年3月の届出)。チャイルドシートの取付金具、後輪のアクスルボルト、e-POWERのブローバイホース、制御プログラムが2件。どの届出も、事故の欄は「無し」だ。
5件を型式別に整理した。届出番号・台数・車台番号の範囲は、国土交通省の届出一覧表を画像にして読み、確かめている。
壊れやすいと言い切れる故障率は、国にも日産にも公表がない
国土交通省が公表しているのは、メーカーが届け出たリコール・改善対策の内容で、故障率ではない。日産の公式FAQも、リチウムイオンバッテリーの耐久性について「具体的な数値はご案内していません」と答えている。同じFAQは、通常の使い方なら劣化による交換は不要とし、バッテリーの保証を新車登録日から5年間または10万kmまでのいずれか早い方としている。
そのため「壊れやすい」「壊れにくい」のどちらも、公的な数字では言えない。書けるのは、届け出られた不具合の中身と、対象の台数までだ。内装の質感や雨の日の異音が多いといった話も、確かめられる資料を確認できなかった。

確認できた届出は5件。6AA-P15に4件、RP15・SNP15に1件
国土交通省の報道発表と日産の公式ページで確認できた5件は次のとおり。届出者は日産自動車株式会社で、一覧表の通称名は「キックス」だ。
| 届出日 | 番号 | 不具合の部位 | 型式 | 不具合件数 |
|---|---|---|---|---|
| 令和3年10月7日 | 5027 | ISOFIX取付装置 | 6AA-P15 | 0件 |
| 令和4年6月9日 | 5164 | アクスルボルト | 6AA-P15 | 1件 |
| 令和5年7月14日 | 5350 | ブローバイホース | 6AA-P15 | 53件 |
| 令和5年7月14日 | 5352 | ビークルコントロールモジュール | 6AA-P15 | 0件 |
| 令和7年3月27日 | 5632 | リチウムイオンバッテリコントローラ | 6AA-RP15/6AA-SNP15 | 78件 |
不具合件数は届出時点の数だ。5350と5352はノートやセレナなども含む届出なので、キックスだけの件数ではない。2022年3月までに作られた6AA-P15が4件に載り、2022年5月以降の6AA-RP15・6AA-SNP15が載るのは2025年の5632だけだ。
車台番号の範囲を型式別に並べる。5350と5352は同じ範囲
対象かどうかは、車検証の型式と車台番号で決まる。届出一覧表の範囲と台数は次のとおり。
| 番号 | 型式 | 車台番号の範囲 | 製作期間 | 台数 |
|---|---|---|---|---|
| 5027 | 6AA-P15 | P15-003499〜P15-053909 | 令和2年7月30日〜令和3年9月7日 | 35,111 |
| 5164 | 6AA-P15 | P15-000090〜P15-062377 | 令和2年5月18日〜令和3年11月1日 | 4,736 |
| 5350 | 6AA-P15 | P15-000068〜P15-067927 | 令和2年5月18日〜令和4年3月23日 | 66,190 |
| 5352 | 6AA-P15 | P15-000068〜P15-067927 | 令和2年5月18日〜令和4年3月23日 | 66,190 |
| 5632 | 6AA-RP15 | RP15-000072〜RP15-023109 | 令和4年5月18日〜令和6年9月4日 | 13,465 |
| 5632 | 6AA-SNP15 | SNP15-000074〜SNP15-013145 | 令和4年5月18日〜令和6年6月18日 | 9,782 |
5350と5352は範囲が同じで、同じ車が両方に入ることがある。5件の台数を足しても、別々の車の台数にはならない。日産のページには、範囲に入っていても対象外の車が含まれる場合があること、製作期間は購入時期と一致しないことも書かれている。
2021〜2022年の2件は、チャイルドシートの金具とアクスルボルト
5027は、後席のチャイルドシートを固定するISOFIX金具(ブラケット)のリコールだ。成形型が不適切で、ブラケットの嵌合部の寸法が規定より狭くなることがあり、最悪の場合はチャイルドシートを取り付けられないおそれがある。直し方は、全車両でブラケットを点検し、寸法が不適切なら修正することだ。
5164は、後輪のアクスルボルトのリコールだ。締結作業が不適切なため、走行中の振動でボルトが緩んで異音が出るおそれがあり、そのまま使うと最悪の場合、ボルトが抜けてホイールがロックするおそれがある。直し方は、左右の後輪アクスルボルトを点検し、規定のトルクで締めつけることだ。不具合は1件で、発見の動機は「市場からの情報による」とされている。
2023年の2件は、e-POWERの走行に関わる届出に含まれる
2023年7月14日に、キックスを含む届出が2件あった。
5350は、発電用エンジンのブローバイホースのリコールだ。ホースを守るプロテクタの寸法が足りず、覆われていない部分に亀裂が入ることがある。最悪の場合、エンジンが始動せず、走行中にモーターが停止して走行できなくなるおそれがある。直し方は、ホースを対策品(プロテクタ延長品)に交換することだ。対象はノート、セレナ、キックスの計484,025台で、キックスは66,190台。
5352は、ビークルコントロールモジュールのリコールだ。クルーズコントロールで走った直後に特定の操作をすると、意図しない加速をするおそれがある。直し方は、制御プログラムの修正だ。届出は5車種にまたがり、ノートオーラも入る(ノートオーラのリコール7件の記事)。同年10月26日の訂正報告で直ったのはノート、ノートオーラ、リーフの台数で、キックスの66,190台は変わっていない。

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2025年の1件は、バッテリー残量計。2022年5月以降の型式が対象
2025年3月27日に届け出た5632は、キックスだけのリコールだ。6AA-RP15の13,465台と6AA-SNP15の9,782台、計23,247台が対象で、リコール開始日は令和7年4月4日とされている。
リチウムイオンバッテリコントローラの制御プログラムが不適切で、充電状態を正確にとらえられなくなることがある。その結果、メーターのバッテリー残量計が増減をくりかえし、そのまま走ると、e-POWERシステム警告灯が点灯する。最悪の場合は、バッテリー残量不足と誤って判定され、駆動用モーターの出力が止まって走行できなくなるおそれがある。
直し方は、制御プログラムの部品番号を確認し、対象のものは対策プログラムに書き換えることだ。不具合は78件、事故は「無し」とされている。改善済みの車には、赤色のシールをモデルナンバープレートの右横に貼ると、説明図に書かれている。
リコールの数は、故障の多さとは別の話
リコールは、原因が設計や製作の過程にある不具合を、メーカーが国土交通省に届け出て無料で修理する制度だ。届出の数は、故障の多さを示す統計ではない。5350と5352のように他の車種と一緒の届出もあり、件数だけでは「どの車が壊れやすいか」はわからない。
リコールとは別に、日産は2020年7月10日にキックスの「サービスキャンペーン」を出している。リチウムイオンバッテリーのチューブジョイントのキャップが付いていないものがある、という内容だ。対象は6AA-P15のP15-000275〜P15-003022(製作期間は令和2年5月18日〜6月13日)。
自分の車が対象か、車台番号で確かめる
- 車検証で型式と車台番号を見て、上の表の範囲に入るかを確かめる
- 日産のリコール等対象車の検索に車台番号を入れる
- 国土交通省のリコール情報検索で、キックスの届出を探す
- 日産お客さま相談室(0120-315-232)か販売会社に問い合わせる
中古で買うときは、売り手に作業が済んでいるかを聞き、車台番号で検索して確かめる。5352は黄色、5632は赤色のシールをモデルナンバープレートの右横に貼ると説明図にあるが、シールだけでは判断せず、検索か販売会社で確かめたい。
まとまった購入資金を用意せずに乗る方法として、カーリースを比べる人も増えています。国産車・輸入車の約300車種を月々定額で選べる月々定額のカーリース【オリコで乗ーる(おりこでのーる)】
のようなサービスもあります。
型式別に整理した別の車の例は新型ヴェゼルの記事。車のトラブルと弱点は、トラブル・弱点対策のカテゴリにまとめている。
情報源
- 国土交通省 リコールの届出について(ニッサン キックス)(2021年10月7日・届出番号5027)
- 国土交通省 リコール届出一覧表 5027(PDF)
- 国土交通省 リコールの届出について(ニッサンMT キックス)(2022年6月9日・届出番号5164)
- 国土交通省 リコール届出一覧表 5164(PDF)
- 国土交通省 リコールの届出について(ニッサン ノート 他)(2023年7月14日・届出番号5350)
- 国土交通省 リコール届出一覧表 5350(PDF)
- 国土交通省 リコールの届出について(ニッサン セレナ 他)(2023年7月14日・届出番号5352)
- 国土交通省 リコール届出一覧表 5352(PDF)
- 国土交通省 リコール届出番号5352に係る訂正報告について(2023年10月26日)
- 国土交通省 リコールの届出について(ニッサンMT キックス)(2025年3月27日・届出番号5632)
- 国土交通省 リコール届出一覧表 5632(PDF)
- 国土交通省 改善箇所説明図 5632(PDF)
- 日産 ノート、セレナなど3車種のリコールについて(2023年7月14日)
- 日産 キックスのリコールについて(2025年3月27日)
- 日産 キックスのサービスキャンペーンについて(2020年7月10日)
- 日産 リコール/改善対策
- 日産 FAQ ハイブリッド車・e-POWER車のリチウムイオンバッテリーの安全性・耐久性(2026年9月30日更新)
- 日産 リコール等対象車の検索
- 国土交通省 リコール情報検索

